一途愛
「いつか話そうと思ってたからいい機会だな。
おまえも男だし…大関さんともそれなりの付き合いなのかは
知らないけどな……。
道を誤るなよ。俺の人生の汚点は おまえの母親と間違えを
犯したことだ。ただ伊織も おまえも俺の子供には変わりない。
あいつは愛せなくても 俺の血を分けたおまえたちは
愛してる。」

「てめぇ…何言ってんだよ。」

龍の顔は私から見ても恐ろしい顔だった。


「ミチルの母親と結婚するはずだった。
ちょっとした言葉のすれ違いで ケンカになって
ミチルの母親にしばらく会いたくないって言われて ヤケになって
したらそんときよく行ってた店でバイトしていた
おまえの母親に声をかけられて…ズルズルと……
そしたら妊娠したって言われて…俺はどうすることもできなくなって
ミチルの母親を傷つけて…おまえの母親と結婚した。」


龍の拳が震えている。


「後で知ったのはさ それがアイツの手だったってことさ。」

「マジで言ってんの?」

「俺はさ 騙されたんだって。
身よりのない 
飯だけは上手く作れて 家事は完ぺきだけが取り柄…
だけど愛せなかった…ミチルの母親をずっとずっと思いだしてた。
昔の女の美しさを忘れることができなかった。
ぶさいくな顔を毎日見てるだけで 吐き気がした。」

「じゃあ なんで俺まで作ったんだ?」

「それもあいつの手だった。
俺が他に女がいるってわかってたんだな。
なんとか跡取りを産んで 俺を縛りつけたかったんだろうな。
そう言う女だよあの女は。」

龍の目から 涙がポタポタと落ちてきた。

その時

「やめなさい!!!」

ふり向くと おばあちゃんが立っていた。
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