一途愛
「ごめん 待たせて。」

口もきけない様子の私の顔を覗き込んだ。

我慢してた涙がポタポタ落ちた。
龍は無言で私の手をいつものようにとって
歩きだした。

もうこうやってこの道を歩けない。
そう思うだけで絶望した。

龍と一緒にいるから・・・・
毎日が輝いたのに・・・・。


でも…でも辛いのはきっと龍も同じ。

龍の顔見たら 痛いほど伝わってくる。


私は龍を信じよう
その時 そう決意した。

公園のベンチに腰かけた。

雪解けの進む公園
ベンチは温かい春の日差しで乾いている。

「姫 ごめんな。突然こんなことになって。
俺 ここ数日で死ぬほどいろいろ考えたんだ。
自分の夢のこと それから…姫のこと…。」


ポタンポタン涙は大粒になってスカートを濡らす。


「どうしても どうしても
じいちゃんとの約束を破るわけにはいかない。
死ぬ間際まで 会社の事…
何より従業員の生活を心配してたんだ。
うちのじいちゃんを尊敬してる。
多分じいちゃんが元気だったら 俺の夢を応援してくれて
きっと味方になってくれたんだと思う。
でもやっぱり心のどこかで
やっぱり会社を継いでほしいって
ばあちゃんにはぼやいてたんだって。
かあさんが いつもじいちゃんとばあちゃんを
大切にしてあげないとって言ってた。
俺はその時 何も知ろうと思わなかったけど
ずい分かあさんの力になってくれてたんだよな。」

龍は下を向いた。
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