一途愛
「アイツがすべての元凶なのよ。
母のこと私と龍のこと それからじいちゃんやばあちゃん
会社のこと……。あいつが父親だなんて生まれてきたのさえ
呪いたくなるわ。」

私は静かに伊織さんのおなかに触れて 撫ぜる。

「生まれてきてくれてよかったです。
伊織さんも龍も…。こうして会うことができて
私は感謝します。あのおとうさんにも・・・・。」

伊織さんはキョトンとしていたけど いきなり笑いだした。

そしてまた私を抱きしめた。

「そういうとこ 龍が好きなんだね。
今 なんかわかった。姫ちゃんといると元気になるわ。
そうだねあんなくそでも 私たちをこうして世の中に誕生させて
私はまた親になろうとしてる…そうだね 
うん そうだそうだ。
姫ちゃん ありがとね。」

よくわからないけど 伊織さんが何度も感心してる様子なので
ま いいか~~と思った。


「龍は頑張ってる様子ですか?」

「アイツは何も連絡をよこさないのよ。心配してんだけどね。」

「龍らしいですね。」

しばらく話していると 伊織さんの様子が少し変なことに
気が付いた。

「伊織さん?どうかしました?」

「あ なんか…おなかがすごく張ってきたの。」

よくわからないけど 大変なことなんだって思った。

「病院行きましょう。
付き合いますから。」

伊織さんの顔が真っ青になった。

「どうしよう…。陣痛?」

私はタクシーに向かって手をあげた。
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