一途愛
無言だった。
女の子は疲れ切った様子だった。

そう言えばあの子も病気がちだった。
もう間違いない気がしていた。


「つかまって下さいね。」

女の子はとても軽かった。

横にして布団をかけてあげると
「龍の彼女……。」と声がした。

「え?」

「知ってるよ。大関さん。」

顔にかかっていた髪の毛をかきあげると
記憶の底にいた葉月が現れた。


「葉月ちゃんなんだ やっぱり。」

「私はずっと知ってたよ。
大関さんが看護師さんだって。
もう入院 長いんだよね。」

「声かけてくれたらよかったのに。」

平静を保つ。

「いつも走っているから。」

「あはは・・・もう必死なの、毎日。」


色白で顔色は悪いけれど
やっぱりキレイな子だなって改めて思った。


「失敗してこの間 怒られてたよね。」

「やだ。見てたの?もう…恥ずかしいな。」

「あれからもう何年たったのかな。
私は相変わらず 病院と家の往復だし
大関さんはいいね。ちゃんと生きてて。」

葉月の表情は曇っていた。
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