一途愛
「龍くん こっち勤務になったって。
総務配属って聞いたよ。
俺は会えなかったけど 夕方 営業に行ったやつが
御曹司がいたって騒いでいたからさ。」

「そう。」

こっちにいるんだ。


そう思うだけで少し嬉しかった。


「だけどあそこの会社はけっこう大変らしくて
故会長派と社長派に別れてて 今はその社長派が会長派を
抑えつけて経営してるらしいけど あんまり評判よくないらしい。
俺はさ 龍くんのおとうさん 社長に世話になったから
あんまり言えないけれど 今の社長なら近い将来
あの会社はダメになるって言われてるみたいだぞ。」

なんかわかる気がする・・・。


「いい人なんだけどな社長。俺の時は
簡単に受けてくれたし…子供たちが仲良くしてるからとか言って。
あの人がいなかったら 今の俺はいないから…。
ほんとあの社長には感謝してるよ。」

「ほんと リストラ寸前をあの契約で
救ってもらって…今 パパは課長になれたしね。
感謝しきれないわ。」


子供たちはただまっすぐ愛し合ってただけなのに
大人の事情にかりだされたのは
おもしろくなかったけど


こうして家庭が平和でいられるのが
あの父親のおかげだと思うとなんとも
やりきれなかった。


「龍くんのこれからは注目の的だよ。」

「そう。」

気のないふりをして食器を片づけた。

「寝る・・・・・。」

二階の階段を登る足は重かった。
< 298 / 416 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop