一途愛
「どう?」

「さすがですね。腕はまたさらにあがってる。」
私が言うと綾人はケラケラ笑った。

ヒゲが生えていたけど
相変わらず可愛い顔。

「俺さ いまここのチーフでね。
ほんとはこんなことはよっぽどの大物しか
やらないんだよね。」と耳元で囁いた。

「私 大物ですか?」

「うん 俺の大切な……恩人。
こうやって成功してるのも 姫ちゃんのおかげなんだ。
前も言ったけどさ さらにあのカットモデルの後
顧客が増えて…今はこうしてスタイリストとしてやってる。
夢はさ 東京に進出して 有名芸能人とか
手がけること。おっきいだろ?夢。」

「ほんと~~でもできるでしょう。
なんかできる気がする。このテクニックを持ってたら。」

「姫に出会わなかったら俺 今頃きっと
フラフラしてさ…夢なんて見る気にもなれなかった。
だからいつも忘れたことなかった。
まさか今日会えるとはね。」

「なんだか神様みたいね。」

「さ…今日はどんなお姫さまになりたい?」

「う・・・ん・・・
私らしい…姫かな。」

「姫らしいお姫さまか…。これまたいいチャレンジが
できそうだな~~。」


雑誌を数冊持ってきてくれた。

「本でも読んでて。それから鏡はしばらく見ないでよ。」」

「大丈夫だよ、大人になったもん。」


綾人が額に優しくデコピンをした。

ドッキン……
龍以外の男の人に触れられちゃった……。
慌てて雑誌に目を落とした。
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