一途愛
「伊織さん……。」私は困ってしまった。

「うちの母はね 最後まで心配してたの龍のこと。
私は年が離れていたし女だということもあって
さっさと好きな人のところに飛び出しちゃったから…
でも龍はそういかなかったから
すごくぐれちゃって大変だったの。」

「聞きました。」

「あ 過去のこととかも?」

「好きになった人が母親違いのきょうだいだったってことも。」

「そう あの子は姫ちゃんにはなんでも
話せたんだね。だから楽になったのかな。
全部一人で抱え込んじゃうような子だったの。
母親の急死も自分のせいだってずっと責めているしね。」

「龍は真面目なんですよね。」

「ある意味 まっすぐだわね。
あの子のそういうところを輝かせてくれたのは
姫ちゃんだと思ってるわ。
素直になったし笑うようになったし 何より
未来を語るようになった。
ホントここにきてからあの子 すっごく変わったのよ。」


伊織さんは優しく微笑んで

「だから結ばれてほしいの。
いいじゃない背負わなくても……。
自分のことだけ考えたって…
私と龍が間違いで生まれたんなら
父親が言うように…
じゃあもう間違えちゃダメだよ。」

「龍を私は信じてるから……。
それに従うしかないです。
苦しめたくないんです。充分に苦しんでるから。」

「いいのかしら
あなたたちすごく間違えてるって思う。」

「龍を責めないで下さいね。
私は大丈夫です。」

伊織さんは体を乗り出して私を抱きしめた。

「私も 大好きよ姫ちゃん。」

いい香りがして目を閉じる。
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