一途愛
「私一人で育てます。」

「無理だから。夫いたって育児ノイローゼ―になるのよ。
一人で育てるなんて絶対に無理。
お金だってかかるのよ。誰かに手伝ってもらわないと。」

「でも 産みたいんです。
龍の赤ちゃん 抱きたいんです。」

「だから龍に言おうよ、」

「龍を苦しませたくないんです。
だから知らせないで…お願い伊織さん。
お願いします。」

「そんな簡単なものじゃないのよ。
ご両親にはなんて言うの?」

「父親のことは言いません。
だけど ちゃんと話します。」

「世の中甘くないのよ。
子供の人生もかかってるの。
わかる?」

「でも…産みたいんです。
バカでも狂ってても…龍の子供がここにいるって
思えるだけで…私は孤独から解放されたんです。」

「ほら 龍と一緒にいたいんじゃない。
痩せ我慢してるんでしょ。」

「だけど…お願いお願い伊織さんお願い…。」

もうすがるしかなかった。

「龍の子供を産みたい……一緒に生きていきたい…。」

「この子がネックになって好きな人ができた時
邪魔になるのよ。それじゃ可哀そうでしょ?」

「もしも…もしもそんな日が来たら…
その人がこの子を愛してくれない人なら
好きにはならない。」

「姫ちゃん……
ちょっと考えさせて 私にも時間が必要だわ。」

伊織さんは立ちあがった。
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