一途愛
「俺が泣きついたばかりに……。」

「それでも今こうしていられるのは あの時
龍くんと姫が犠牲になってくれたからでしょう。
二人には…本当に申し訳ないと思ってる。
だけどあの時 パパがリストラされたら…うちは今頃どうなってたか
わからない・・・考えるだけでも恐ろしいわ。」

「昨日 龍くんから連絡をもらって…
話がありますって言うから…
仕事が終わってから会ったんだ。
いい男に成長して……本当にまっすぐで…
こんな息子がいたらなって…思うくらいだった。
自分と会ったことは絶対に
姫には言わないでくれと 固く約束させられて…
俺もどうしたものかと ママに相談していたんだ。」


「いいおつきあいしてたのね。
姫がある時期を境にどんどん変わって行った。
龍くんの存在があることは知ってたけど……
龍くんの生い立ちや反抗してきたこと おかあさんを亡くして
絶望してたこととか…きのうパパが
酔えなかったって言いながらママに教えてくれたの。
あぁ あなたたちは二人がお互いを
支え合ってきたんだって……。」


「幸せにしたかったのにすみません。
僕の力が至りませんでしたって涙をこぼしてた。
今でも 想いは変わらないもっともっと強くなっているけど
別れなければいけなくなりましたって…。
そのきっかけは俺だったって謝ったら
自分の父親は卑怯な男だけど
姫のおとうさんを救えたなら よかったですって
言ってくれた。
申し訳ない姫。
おまえたちを引き裂いたのは俺なんだ。」


パパが土下座した。

ママがその背中をさすって

「でも 生きて行かないといけなかった。
ここに残ってパパが認められて…今はパパの力だけで
こうやって会社に残ってるんだもの。」


いい夫婦だなって…改めて思った。
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