一途愛
「情けないだろ。
誰にも愛されてないんだ。」

点滴を取り替えに来た私にそうぼやいた。

「愛されてないんじゃなくて 愛される努力が
足りないんですよ。
私もそうでした。友達もいなくて いじめられてて…。
今 自分が死んでも誰も私の存在すらも知らないんじゃないかって。
どんどん殻に閉じこもって
朝起きてから夜寝るまで 誰ともはなさなかったなんて
ことは毎日のようにありましたから。」

「大関さんも卑屈っぽいんだ。」

「はい めっちゃ卑屈でした。
人を信じるなんてバカげたことだって思ってたし
これから先も絶対に信じないって
そう思ってましたね。龍くんに出会うまでは…。」


「別れたんだろ?」

「はい 別れました ご心配なく。」

「あいつはこれから会社を背負って行く人間だし
普通の生き方はしてられない。」

「わかってます。
龍の足は引っ張りませんから。
それが私の愛の形です。」

龍の父親が目を丸くして私を見ていた。


「宗方さんも…どこかで
愛されたいって思ってるんでしょ?
伊織さんや龍に おとうさんって呼んでほしいって
思ってるんじゃないですか?」

龍の父親は私から目をそらした。
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