一途愛
「俺は親父に愛されたことがなかったからな。
親父は兄貴ばかり可愛がっていた。」

「おにいさんがいらしたんですか?」

「大学のサークルで登山中に滑落したんだ。
それで仕方なく俺に目先を変えた。
今まで同じ兄弟というのに差別されて暮らしてきて
今さらなって感じだったな
だから正直 こんな会社どうなったってかまわない。」

「悲しいですね。もうそういうことで
卑屈になるのやめませんか?
人生残り少ないんですから もっと気楽に行きましょうよ。」

血管にうまく入って行った。


「点滴成功~。」

「大関さん注射うまいな。」

「集中力です。注射だけは褒めてもらえますよ。
早く病気よくして 奥さんのこともご心配でしょ?
帰ってあげなくちゃ。」

「娘も今 イギリスに留学してるから…あいつ
不安がってるだろうな。」

「そうですよ。連絡してもらってくださいね。」

私が病室を出ようとしたら


「ちょっと待ってくれ。」

「はい?」

「大関さんが連絡してくれないか?」

龍の父親はそう言った。
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