一途愛
仕事も手につかない


心のバランスが一気に失われた
自分にとって 姫という存在がこれほど大きなものだったのか


これでもかこれでもかと
思い知らされた。


一人で飲みに行った行きつけの店

「めずらしいね。宗方くんでもこんな時あるんだ。」

顔見知りのマスター

「全部忘れられる酒ってないですかね。
酒が切れても思いださないって。」

「そんな酒あったらさ みんな欲しがるよ。
みんなそんな辛さと戦ってるんだよ。」

「俺は今 最高に辛いっす。」

「大いに悩めよ若人。酒に逃げるだけ次の朝は
辛さが倍になって襲ってくるからたいがいにしてさ。」

「んなこと言われたら 酒に逃げられなくなったっすよ。」


そうだった。
酒に逃げたって結局 また現実に戻される。
二日酔いは嫌いだ 敗北者のようで・・・・。


「宗方?」

ふり向くとキレイな女が立っていた。

「誰?」

「相変わらずつれないのね。
あんたの頭の中には 姫しかいないんだ。」

「え?誰?」

「美里 高校の時 姫をめっちゃいじめてて
転校してきたあんたにコクって 姫に負けた
可哀そうな女。」

「ああ 思いだした。」

「自分のことこう言わなきゃなんないって
ほんとにムカつくわ。」

美里は微笑んだ。
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