繋いだ手
セルフと書かれている貼り紙を見て、お冷やを二つ、運んできた善の両腕が、



テーブルで、グラスを着地させたのを確認すると同時に、ぐた〜っとなった。



「あ〜。せっかくきたのに。凹むよなぁっっ」



目的の店に、定休日の札がかけられているのを、直視して、


車はUターンした。



そして、そこから100mしない程のところにあったラーメン屋を、


今夜の晩餐の場所に選んだ。



ため息をこぼしながら、善は、色褪せた、赤いテーブルの上にのびた右腕に、右耳を擦りつけるようにして、頭をのせている。



自分自身も、ちっとも納得出来て無かったけど、



あたしはとりあえず、慰めのことばを強引に並べてみた。



「楽しみは後まわし!
今日はここが運命!逆に、えっらい、うまかったりしてぇ!」



「んははっ、こんな、運命って、どんだけプラス思考よ……
ふふっ、だね、…だよねぇ〜。あ〜高速代、無駄になんなくてよかったよぉっ」



半ば、逆切れハイ!


あたしの強引な前向きに、いつもの声まで、善のトーンも、あがって



定休日のソレを克服したことをあたしに伝えた。
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