繋いだ手
「ねぇ、善、さっきのアレ、また聞きたい!かけて!」

「アレ?いいよ、変えていい?」



あたしは首を縦に振った。

善が、助手席らしい役目を果たす。



オレンジのディスクが入ると、スローなギターで曲が始まった。



あたしは、行きの時間にトリップしていた。



善を乗せてすぐ、

行きの車の中で
初めてソレを耳にした時、

あたしは、すぐにその、かすれ声に、入り込んだ。


善は、とにかく聞いて。とだけ言った。

デッキにそのCDを入れる。


いつだったか、学校帰りに、駅前のタワレコで

その唄を試聴した時、一気にそこに、吸い込まれるように聞き入って


その時に、あたしにも聞かせたいと思ってくれたらしい。



今日、その、例のモノを持ってきてくれて、会って早々に聞かせてくれた。


あたしは、スローなギターに乗せた、優しく唄う、かすれ声に、聴き入った。



最初のフレーズから、何の言葉も発する隙がないほど、

全部直球で、ソレはあたしの中を打ってきた。




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