繋いだ手
曲が終わって、何の言葉も見つけられずにいるあたしは、



ただ、頷いた。



「オレと理央さんが、いっつも語ってるようなことが、そのまま詞になってるから、これ、聞かせたかったんだ。マヂやばいべっ」



「……………。」



「やりたい事や、迷い、不安、表に出したら、恥ずかしいと思ったりする事を、この人は全部、まんま唄ってる。」



善は、やさしくゆっくりそう言って、また黙って聞き入った。



あたしは、最後の音まで、逃さず耳に入れ込んでから


ようやく言葉を発した。



「これ………あたし。」



それだけ 発した。



何が「あたし」か、


善には意味がわからないだろう。



あたしは、善に、自分の事をまだ、何も話していない。
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