繋いだ手
《Mass》という、かすれ声のボォーカルのいる、あのバンドに、



あたしは、一枚ページを捲られそうになっていた。



思わず、全部、吐き出しそうで、


声をだせば、後先を考えず、そうしちゃいそうで、



言葉が出てこなかった。


その時は

「コレ、あたし」

が精一杯だった。



善はデッキの左矢印が二つ並んでいるボタンに手をかけ、



(もう一回聴きたいでしょぉ?)と言いた気に、めくばせをした。



自分のそれと、あたしの気持ちを察し。




善?今感じた事を、全部外にだしたいよ。


それを、善に聴いてほしいよ



善はそれに黙って頷く?
到底、手には終えない相手だと、距離をおく?



やっぱり、まだ恐かった。


あたしは、音にせず、飲み込んで、自分の中に詰め込んできた、今にも溢れそうなそれを


『救って』という気持ちで、いっぱいになりながら、さらに飲み込み、煙草に火をつけた。
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