サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
「でも、

 毎日、毎日

 葵、葵…
 
 って、私だっているんだよ。

 それに、

 純一は

 私のもの。

 葵には渡さない。

 私だけを愛して!

 私だけを見て!

 葵になんか

 純一を渡さない。」

有喜の気持ちは

いつしか

嫉妬から

憎しみへと

変わりそうなくらい

迫力があった。

純一は

そんな有喜が

少し怖かった。

葵の命は

俺が守る。

そう誓った。

「有喜。

 俺が愛してるのは

 有喜だけだよ。

 葵は赤ちゃんだ。

 ただ手がかかるだけ。

 だから心配しなくていいよ。

 俺は

 有喜だけを

 愛してるから…。」

今の有喜に

言葉はほとんど

伝わっていないだろう。

純一は

どうしたら

葵を受け入れてもらえるか

考えた。

だが、

思考能力の

薄らいだ

有喜に、

今は何をしても

無駄だろうと感じた。

一か八かで

過去に書いた

二人の日記帳を

見せてみることにした。
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