サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
病室に入ると、

布団に潜り込んでいる父の姿があった。
 
「あなた!!

 どうしたの?」

長年付き添った母の声を聞くも、

父は反応がない。
 
「お父さん?」

おそるおそる布団をはぐってみると、

顔色の悪い父の姿があった。
 
「お父さん!

 なんで連絡くれなかったの?

 凄い心配したんだからね。」

気性が荒れた感じで

母は必死で父に事情を聞くが、

父は何も反応しない。

まるで悪魔に魂を抜かれたような

父の姿があるだけだった。

母はナースステーションに行き、

父の病状の確認に行った。

「すみません。

 御手洗ですけど、

 主人の事で…。」

母が話そうとすると、

看護師は待ってましたとばかりに

話しだした。
 
「ああ、御手洗さん。

 連絡取りたかったんですけど、

 御手洗さん身分証明何も持ってなくて、

 連絡の取りようがなかったんですよ。

 住所聞くんですけど、

 解らないようで、

 名前だけ

 何とか聞く事で来たんですけどね。

 それ以外は

 あまり口を開こうとしないんですよ。」

そう言い、母を中に案内した。
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