サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
「そういえばさ、

 会うの久しぶりだよね。

 最近全然会ってくれないんだもん!

 寂しかったー。」

「…。」

純一は驚いた。

昨日会ったばっかりだぞ!

有喜がそんな事忘れるなんて

絶対おかしい。

昨日はあんなに、

会えた事喜んでたじゃないか!

んっ?

もしかして、

これは寂しさを素直に表現できない

有喜ならではの、

寂しさのアピールなのか?

そうに違いない!

有喜が忘れる分けないもんな。
 
「そうだな。

 昨日会ってから

 6時間は経ってるし、

 久しぶりに会う感じがするよな。」
 
有喜は少し不思議そうな顔をし、

「えーっ。

 何言ってんの!

 昨日会ってないよ。

 どこの女と間違ってんの?

 私と会う暇はないのに、

 他の子とは会ってるとか、

 酷い!」

怒っているわりには、

表情のない有喜である。

純一は、

明らかにおかしいと感じた。
 
「有喜、

 今日時間あるか?

 と言うよりは、時間作れ。

 今日は仕事休むぞ。

 俺も休むから。」

純一は焦りを隠せない様子で、

しゃべってくる。
 
「そんな事したら

 クビになっちゃうよー!」

有喜はのんきに話を返す。
 
「いいから、

 俺の言うとおりにしろ!」

純一の気迫に負け、

有喜は渋々会社を休む事にした。

純一は、頭の中でパニックに陥っている。

一生懸命有喜の前では

冷静を保とうとしているが、

動揺は隠しきれない。
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