サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
有喜は

いったいどうしてしまったんだ…。

少し会わないうちに、

何かにとりつかれたみたいに

変わってしまった。

部屋も掃除した気配がないし、

会った事は忘れるし、

表情もなくなった。

有喜の生きる気力が

失われている…。

これじゃあまるで、

人形だよ。

有喜を占い師に見せようか…。

それとも御祓い?

いや、病院?

カウンセリング?

どこが一番

有喜に適しているんだろうか…。

純一は結局、病院を選択した。
 
有喜は純一に

「なんで病院なの?」

と何度も問うが、

純一は黙りこくったまま下を向いて、

今か今かと順番を待っている。

純一は心の中で

葛藤をしていた。

このまま病名が付くのと付かないのと、

どちらがいいのだろう…。

病気とは、

認めたくない…。

しかし、

病名が付かなければ

有喜に

的確な治療を提供してやる事も

出来ない…。

純一の心の中での葛藤とは裏腹に、

有喜はやる気のない顔で、

職員たちを眺めている。
 
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