サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
純一は診察室の外の椅子に座り、

有喜の出てくるのを待った。

診察は15分弱かかったが、

純一には

2時間くらいの長さに感じた。

純一は願った。

何を願ったのかは解らなかったが、

気付いたら何かを神に願っていた。
 
「御手洗さんの付き添いの方」

看護師に呼ばれた。
 
「はい。」

足早に純一は有喜の元へ行った。
 
医師に

「病状説明をしたいのですが、

ご家族の方ですか?」

純一は

「いいえ。」

と、切なそうに答えた。
 
医師は、

「そうですか…。

病状の説明は、

ご本人さんまたはご家族の方でないと、

出来ないんですよ。

御手洗さんのご家族の方に

連絡してもらいたいのですが…。」

と言う。

純一は有喜に実家の電話番号を聞き、

看護師に伝える。
 
有喜…。

いったいどうしたんだよ…。

家族への病状説明って…。

そんなに悪いのか?

純一は頭を抱え、

廊下のソファーに座り込む。

そこへ、有喜がやってきて

純一に声をかける。
 
「私達、

何で病院に来てるの?」

純一はそんな有喜が

切なくて仕方がなかった。

近寄ってきた有喜に

何も言わず、純一は

ギュッと抱きしめ、離さなかった。
 
「有喜は疲れてるんだ…。

酷く疲れてるんだよ…。

少し休もうな…。」

外は純一の心を現しているかのように、

大雨が降り出していた。

雨に打たれる窓が

泣いているかのように見え、

余計に切なく感じさせる。
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