サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
有喜の母親が

急いで病院に駆けつけた。

「有喜!何があったの?」

と、心配な様子で

有喜の元へ駆けてくるが、

「おかあさん。」

と、有喜が立つ姿を見て

母は安心した表情に変わった。
 
「もうびっくりしたじゃない!

急に呼ばれるから、

母さんてっきり

事故か何かかと思ったわ。」

安心した様子の母親をよそに、

看護師は

「御手洗さんのご家族の方ですか?」

と、診察室に呼ぶ。
 
「はい。」

と、返事をし、

少し不安そうな顔をして診察室に入る。

医師より病状説明が始まった。

医師は深刻そうな顔をして言う。
 
「誠に残念ですが、

娘さんは若くして痴呆の症状が見られます。

少し頑張りすぎたんでしょう。

酷く疲れてますね。

少し精密検査をしたいのですが、

短期入院という形を取っていいですかね?」

有喜の母親は耳を疑った。
 
「有喜が痴呆?
まだ20代ですよ!

人生もこれからなのに…。

まさかお父さんと同じ病気じゃ

ないでしょうね?

ねぇ、先生…。

あの子を助けてあげて下さい…。」

と、医師にすがるように

泣き崩れてしまった。
 
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