サンドグラス ～アルツハイマー闘病記～

医師は固く閉じた口を開く。

「今日検査をさせて頂きました。

血液検査とCT、MRIを行いました。

まず、病名から言いましょう。

アルツハイマーで

間違いないと思います。」

母親は医師の話を聞いた瞬間

泣き崩れた。

「何で？

何でうちの家族だけ

こんなに病気に取り憑かれないと

いけないの～！」

有喜の母親は泣き叫んだ。

純一は

有喜の母の肩を撫で下ろし

「続けてください。」

と冷静を装ったが

表情には焦りが隠せない様子である。

「アルツハイマーには

遺伝的要因というのがあってですね、

有喜さんのお父さんが

その要因を持っていたために、

有喜さんにも遺伝してしまったんです。

血液検査にて

証明しましたんで…

こちらを見て下さい。

第19番目の染色体にある

アポタンパクEというやつが、

遺伝子異常を持っているんです。

アポタンパクEには、

２，３，４と３種類の遺伝子があって

有喜さんのように

４の遺伝子を持つ事によって、

高率にアルツハイマー型痴呆が

もたらされてしまったんです。

でも、このアポタンパクEの

４を持っているからと言って、

みんなが早くにアルツハイマーが出現する

というわけではないんですよ。

有喜さんは、

環境も影響してたんだと思います。

いろいろ

ストレスも抱えてたんでしょう、

それで発症が早まってしまったのかも

しれませんね。

アルツハイマーは未だに未知の世界で、

発症の原因などは

はっきりしていないので、

何とも言えませんがね…。」