サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
有喜の母は

泣きながら、あがく…。

「じゃぁ、

有喜はアルツハイマーじゃないって

可能性もあるんじゃないんですか?

今はたまたま、

疲れてて

ちょっと様子がおかしいだけとか…。

先生!

何とか言って下さい。」
 
有喜の母は、

病名を受け入れる事が出来ない。

純一も同じである。

2人共、

現実として受け止める事が出来ない。

夢だ夢だ

と純一は心の中で叫んでいる。

医師は話を続けた。
 
「アルツハイマーだと、

決定する検査結果もあるんです。

これを見て下さい。

これは脳のCTと、MRIです。

これらは脳の断層写真を撮ってくれるんです。

この辺、

脳の萎縮が少しではありますが

起きてます。

このまま放置していれば、

どんどん進行していきます。

今はまだ、

痴呆もそんなに酷くはない。

記憶だって全然残っているし、

今のうちにしっかり周囲との接触をさせ、

精神活動への参加も

させるようにして下さい。

そうする事で、

少しでも進行を遅らせる事が出来ます。

こちらも最善の努力は

尽くさせて頂きます。

後、有喜さんへの告知は

どうされますか?

まぁ、アルツハイマーはいずれ

痴呆を患うので、

最終的には忘れてしまいます。

それを考えると、

言ってストレスを抱えさせるより、

言わない方が良いのではないでしょうかね?

考えておいて下さい。

 何か質問は?」

医師の言葉に、

2人共言葉を失った。
 
「質問がなければ、

 私はこれで失礼します。」

と、医師は足早に部屋を出ていった。

よっぽど忙しいんだろう…。
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