サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
「そんな事ないのよ。

 純一さんが自分を責める事ないわ!

 決して、

 純一さんのせいじゃないんだから。

 自分を追い込むマネだけは

 よしてちょうだい。

 さっき有喜と話しててね、

 有喜は凄く純一さんの事褒めてたわ。

 あの子本気で人を好きになったの

 初めてなんですって。

 それに、純一さんは

 とても優しい人で、

 仕事熱心で

 いつもツンとしてる有喜を、

 女らしくしてくれる

 魔法の手を持ってるんですって。

 だから、結婚しても良いかな

 って思ってる。

 って私に言ったの。

 でも、あの子はもう

 結婚なんてする事も出来ない。

 一人の女としての楽しみを

 経験することなく、

 一生病院で暮らすんだって思ったら、

 もう涙が止まらなくてね…。

 でも、これからは、

 私が責任持って面倒見ていくから。

 純一さん今までいろいろと、

 ありがとね。

 有喜もほんとあなたと一緒で、

 幸せな日々を過ごせたと思う。」

と、有喜の母は涙を浮かべながらも

精一杯の笑顔で、

純一に顔を見せる。
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