サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
2人は病室に戻り、

有喜の顔を見て帰宅した。

どこからどう見ても、

有喜は綺麗な女性で、

病気だとは思えなかった。

帰り際に

有喜の母は

「やっぱり、

 あの子の診断は

 間違っていると思うの。

 どう見ても普通だもの。

 あの医師

 きっと

 私達家族を

 陥れようとしてるんだわ。」

そんな事をぼやき、

現実を受け入れる事が出来ない。
 
「間違いだと

 いいですね…。」

純一も、

自分の願いを込めて

そう伝えた。
 
次の日、

純一は朝から

プレゼンで忙しく、

病院には

顔を見せる事が出来なかった。

仕事は深夜までかかり、

同僚には

最近仕事をさぼっている

という評判がたち、

これ以上休みを取る事は

難しくなった為、

純一は自分の昼休みを利用して、

有喜の顔を

見に行くように努力した。

寂しい思いをさせると、

進行を進ませてしまう。

そればかりが頭の中をよぎり、

暇を作っては

電話やメールをした。

有喜が少しでも

寂しがらないようにと、

出来る限りの

事をした。
 
仕事の合間を見ては

10分、20分と、

有喜に会って

1日の出来事を話しては、

帰る。

その繰り返しだったが、

有喜の寂しいという言葉は

幾分か減っていたように

思えた。
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