サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
仕事は相変わらず

忙しかったが、

この日も昼休み

有喜に会いに行った。

病室に入ると、

有喜の姿がない。

トイレかな?と

10分…

20分…

と待ってはみたが

帰ってこない。

純一は嫌な言葉が脳裏をよぎる。

『あの医師きっと

 私達家族を

 陥れようとしてしてるんだわ…』
 
はっ!

となり、純一は有喜に電話する。

有喜とはつながらない。

もしかしたらと、

純一は病室を飛び出て、

近くの病院を

片っ端から探す。

もしかしたら、

あの医師の診断を疑って

違う病院に

かからせているのではないか?

そんな事したら、

検査づくしで、

有喜に

負担がかかってしまうのに…

そんな気持ちで

純一は無我夢中で探し回った。

有喜!

どこだ!

心の叫びも届かず、

日も暮れてきた。

通りがかりの老人に訪ねる。

「この辺で

 脳外科の有名な病院

 ありますか?」
 
「そうじゃなー、

 この辺だったら

 隣町に山岡脳外科があるよ。

 ここは有名な医師じゃよ。

 年寄りがようけおるよ。」

と、親切におじいさんは

地図まで書いてくれた。
 
「ありがとう。

 恩に切るよ!」

と言って、純一は

タクシーを拾い、

すぐさま駆けつけた。
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