サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
 病気を知ってしまった事は、

 こちらのミスですし

 誤ります。

 ほんとに

 申し訳ございませんでした。

 でも、私事の考えで

 申し訳ないんですが、

 私の意見も

 少し聞いてください。

 私は今まで、

 幾人の患者さんを

 見てきましたが、

 やっぱり告知しないと言うのは、

 人生を存分に

 まっとうする事が出来ないのでは

 ないでしょうか?

 有喜さんの場合、

 告知しても受け止めるまでには

 時間がかかると思います。

 一生の問題ですから…。

 でも、今何でも出来るときに

 告知してあげた方が、

 自分の好きな事が出来て、

 人生に余裕を持って

 楽しむ事が出来ると思います。

 余命を知ってた方が

 自分だったら良くないですか?

 有喜さんはまだまだ

 したい事もたくさんあると思います。

 後悔させないためにも、

 今回病名を知った事は

 有喜さんにとっては

 プラスになったんじゃないのかな?

 と私は思いますが…。」
 
看護師は

少し言いすぎたかな?

と言う表情をし、

2人の顔色を伺う。

有喜の母が口を開く。
 
「確かにそうかもね。

 あの子にも、人生

 やり残してること、

 まだまだたくさんあると思う。

 知ってしまった以上は

 仕方ないものね。

 それを悩むより、

 これからどうやって

 あの子の人生を

 かけがえのないものにするか

 の方が、よっぽど計画にも夢があるし、

 楽しみにもなるわね。」

看護師の些細な言葉は、

母の背負っていた重荷を

軽くさせた。
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