サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
自宅に着き、

旅行の写真をパソコンで

開いて見てみた。

有喜の顔は最近

見ていなかった笑顔ばかりで

母は少し嬉しくなった。
 
「やっぱり

 純一さんに有喜を任せてて

 良かったわ。

 こんな笑顔

 久しぶりに見る事出来たから。」

母はそう言い

純一に感謝した。

有喜と母は

2人ではしゃぎながら

写真を見ていた。

純一は

有喜の記憶力が

劣っている事がどうしても

寂しかった。

この旅行の事も

時間が経てばまた

忘れてしまう…。

どうにかこの記憶を

何等かの形で残す事は

出来ないか…

そう考えていた。

試行錯誤の上、

純一は

日記を付ける事にした。

ちょっと子供っぽいかな

と思ったが、

これ以上は思い浮かばなかった。

純一は少し照れくさそうに

有喜に話した。
 
「有喜、

 2人で日記を付けようと思うんだ…。

 頭の中では忘れてしまっても、

 この日記帳を読むと

 また思い出して

 記憶が甦るだろ。

 どうかな?」
 
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