サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
有喜は

今日の事を書き始めたが

2行でペンが止まってしまった。

えっと…。

何したんだっけ…。

有喜は思い出そうとするが

思い出せない。

さっきの事なのに…。

思い出そうとすればするほど

頭が痛くなる。

悔しい…。

有喜は下唇を噛み締めながら

必死でペンを動かそうとするが

何も思い浮かばなくなってしまった。

三十分が経過しただろうか。

有喜はノートを閉じて

純一に手渡した。
 
「いろいろ考えながら

 書いたから

 時間かかっちゃった。

 楽しい事が多すぎて、

 いろんな事思い出したら

 なんか頭の中整理できなくなっちゃって…。」
 
純一はそっと

肩を抱き寄せた。
 
「いいよ。

 ゆっくりで。

 2人に残された時間は

 長いんだから、

 これからこのノートを

 埋めていけばいいんだよ。

 じゃぁ、確かに預かりました。

 これは家に帰って

 じっくり読ませて頂きます!

 明日俺も書いて持ってくるよ。

 楽しみにしてて!」

そう言い純一は帰宅した。
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