サンドグラス ~アルツハイマー闘病記~
純一は

家に帰ると早速

ノートを手に取った。

有喜の素直な思いを知るのも

怖かったが、

実際有喜が今までの事を

どれだけ覚えているか

知るのも怖かった。

この方法は有喜にとって

いいのか悪いのかはわからない。

ただ、

何もしないよりは

何かして前進した方がいい。

そう自分に言い聞かせていた。

純一は1ページ目を開き、

読み始めた。

少しはにかみながら読んでいたが、

今日の事は

2行も書かれていない。

純一は

有喜を蝕む病魔に勝てない自分が

悔しくなった。

手に取るようにわかる

有喜の記憶障害に

焦りさえ感じ始めてきた。
 
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