PRINCESS×PRINCE
1章

男女入れ替えイベント




誰にだって夢がある。

どんなに叶わないと分かっていても、夢見てしまう憧れのモノが。

求めても求めても手に入らないソレは、あたしにとって『女の子らしさ』だった。


「だからさ、いいだろう?本当にちょっとだけでいいから。おじさんといいことしようよ」


ああ、うざい。
本気でうざったい。

今あたしの目の前にいるのは口・鼻・肩、全身で荒い息をする臭そうなデブ親父。

憐れな子羊を追い詰めた脂っこい唇から出る言葉がまぢで気持ち悪い。

――まぁ、あたしに向けられている訳じゃないけれど。


「ちょっ…やめ…!」



壁ぎりぎりに追い詰められている憐れな子羊はデブに遮られているのであたしからは頭しか見えない。


小さな身長。

きっと小柄で可愛い女の子なんだろうなぁ。

助けてあげたい。
だがしかしあたしも女子。


道の反対側でそんな事を思いながらデブの向こう側の子を見守ること早5分。

さっき電話で呼んだ警察はまだ来ない。
大勢の通行人は見て見ぬフリ。

ああぁあ!

何やってんだよテメーら!
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