蝶が見る夢
桜がもう散りかけているとは言え、夜はまだ寒い。
ミニスカートにカーディガンという軽装の彼女には、きっと堪えるだろう。
少女は訝しげに私を見つめ、暫し間があった後、すっと立ち上がってこくりと首を縦に動かした。
私より一回りくらい小さい彼女は、雑誌のモデルさんみたいに可愛い顔をしている。
私と同じくらいの長さ、胸まである黒い髪は傷みを知らず、薄気味悪い蛍光灯の下で艶やかに輝いていた。
些か野暮ったい雰囲気でも、きっと少女と同じくらいの歳の男の子はこういう女の子が好きなのではないかと思う。
だからこそ、だ。
なぜこんな子が匠なんかに入れ込む必要があるのかが分からない。
黙っていても男の子は寄って来るだろうし、寂しい思いだってしないんじゃないかと。
だけど、そんなのは外見からの連想だけでしかない。
私には理解できないものを、彼女は抱えているのだろうと思う。
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