蝶が見る夢
そうでなければ、彼女はこんなところには来ないはず。
大人しそうで、狂気めいた感じでもなかったから、とりあえず家に入れても害はない…と、信じたい。















「匠の彼女ですか?」


意を決したような顔で、少女はそう言った。
若すぎて、いや、幼なすぎて何も知らない彼女に、「はいそうです」と言うには、あまりに酷すぎるように思う。
そうでなくとも、馬鹿正直に匠の彼女を名乗る気などさらさらないが。


「違いますよ」


私の否定に、彼女の表情が変わる。


「じゃ…じゃあ、なんでここに!?」

「あなただって、なんでここに居るんですか?」


荒々しい質問を冷静に返せば、少女は一瞬黙った。


「あんたには関係ないでしょう?」


押し殺した低い声。
あ、ちょっと怖いかも。
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