蝶が見る夢
少女は黙って紅茶を啜った。
改めてまじまじと彼女の顔を見る。
本当に可愛らしい顔立ち。
大きな垂れ目はマスカラなど要らないくらい印象的で、薄い唇が幼さを残している。
そして、幸いにもこの状況が全くできないほど馬鹿ではないようで、もう彼女の顔はすっかり冷静さを取り戻していた。


「私やあなたが擬似恋愛をしているのと全く同じように、匠もまた擬似恋愛をしているって訳」

「大人ですね」

「大人というより、あなたよりもおばちゃんなだけ」


彼女は「そんなこと…」と言いかける。
あなたもそのうち老けるんだからね。私みたいに。
それか、いつまで経ってもガキのままか。
女なんてどちらかにしか転ばない。


「自分と同じような立場の人間を目の前にして、どう思った?」


私の質問に、少女は少し窮したのち、


「…悲しい…」


ぽつりと、呟いた。
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