蝶が見る夢



「それは私も同じ。私達は互いに顔を合わせちゃいけないの。あなたは今、客以上のことをしてる。だから、フェアじゃないよね?」


彼女は黙って頷いた。
彼女の目がどんどん赤くなっていく。
泣くことができるって、少し羨ましい。
感情表現がきちんとできるのは、とても大切なことだと思う。
少女は、ずっと握りしめていたカップを静かにテーブルのソーサーに戻した。
どうやら、ヘレンドの破壊を見なくて済んだみたい。


「…帰ります…」


少女は大きく溜息をつきながら、そう言った。


「そう」


彼女は立ち上がったけど、私は彼女の向かいでお尻をフローリングにぺたりとつけたまま。
本来ならこの子を駅の近くまで送り届けるべきだろうが(まして、この周辺は治安が良くない)、この場合は妥当ではないだろう。
お互いにいい気分をすることはないだろうから。
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