蝶が見る夢
外は雨だ。
明け方から降り続いている、雨。
窓ガラスを叩くこともなく、まっすぐ落ちゆく雨。
こんな日は、どうしても匠の調子も芳しくない。
昨日の夜まではくだらないバラエティー番組でケラケラと笑っていたはずなのに、目を醒ましたらこんな調子なのだから。
今日が休みで良かった。心底、私は思う。
私だって、できることなら四六時中匠に付き添っていたい。
いつプツリと糸が切れるか分からない匠には、誰が側にいる必要がある。
それは私じゃなくちゃ、駄目なんだ。
匠が私しか求めていない以上は、私以外の人間にそれは務まるはずもない。
しかしながら、私は匠の“病気”を治してあげることまではできやしない。


「匠だって、いつまでもこんな状態じゃ辛いだけでしょ?」


匠の返事はなかった。
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