蝶が見る夢
雑居ビルの5階、狭いカウンターにはバーテンダーの女性が2人、テーブルは窓際に2つしか設けていない。
私はそのテーブル席で、夜の新宿を見下ろしながら、自分が買った男の到着を待っていた。
それで、『あやめさん?』と声を掛けられて顔を上げた途端、まさかの事態だ。
私は、思わず立ち上がってしまっていた。
『仙台の…M高の、山際匠さん…です、よね?』
店内があまりに薄暗くて、私は彼の顔がみるみる青ざめていくのにちっとも気付かなかった。
口を半開きにしたまま、彼は顔を強張らせて突っ立っている。
『……俺、あなたのこと、知らないんだけどな……』
暫しの沈黙の後、彼はそう言うと、緩やかに偽物の笑顔を作り始めた。
だけど、私は笑えない。
喉の奥が掠れて、苦しい。
私はそのテーブル席で、夜の新宿を見下ろしながら、自分が買った男の到着を待っていた。
それで、『あやめさん?』と声を掛けられて顔を上げた途端、まさかの事態だ。
私は、思わず立ち上がってしまっていた。
『仙台の…M高の、山際匠さん…です、よね?』
店内があまりに薄暗くて、私は彼の顔がみるみる青ざめていくのにちっとも気付かなかった。
口を半開きにしたまま、彼は顔を強張らせて突っ立っている。
『……俺、あなたのこと、知らないんだけどな……』
暫しの沈黙の後、彼はそう言うと、緩やかに偽物の笑顔を作り始めた。
だけど、私は笑えない。
喉の奥が掠れて、苦しい。