蝶が見る夢
ぱさ、と項に髪の毛が落ちた。


『タトゥーが入ってる女は、嫌いでしたか?』

『別に。気にしたことないかなー』

『これね、高校生の時に彫ったんですよ』

『…はあ!?』


うつ伏せのまま、顔だけを先輩に向けると、先輩は呆気に取られた表情で私を見ていた。
にやりと、すかさず笑んでみせる。
電気を落とした部屋はカーテンを開け放していて、そこから歌舞伎町のぎらついたカラフルなネオンが無遠慮に差し込んでいる。
そんな色気もへったくれもないこの部屋が、私にはとても新鮮に感じる。


『私、高校1年の時、すっごーく根暗で。まあ、具体的にどうとか言うとちょっと退かれちゃいそうだから、割愛しますけど。で、先輩に一目惚れして、人生が変わっちゃって。そのノリで彫っちゃったわけですよ。若気の至りですよねぇ』
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