蝶が見る夢
インターネットで知り合った、おそらくあまりまともではない彫り師。
見るからに未成年の私に、何も言わず小さな蝶を描いてくれた。
その後、警察に何度か捕まったとインターネットで知った。
素性は結局分からないままだけれど、それでも私は未だに感謝している。
『そんなことが、あんな田舎町で可能なわけね…』
ほえー、と、先輩が溜息をつく。
『つーかさ、俺に一目惚れってどういうことよ?』
『どう、って?』
『何も接点ねぇし、しかもついぞこの間まで会話したことないとかさ。些か信じられないってこと』
『そうですか?』
私から言わせれば、そんなシンプルなことを説明させる方が信じられない。
誰だって霧の中をさ迷う中でほんの一筋でも光が見えたなら、普通ならその方角へ行ってみようと思うじゃないか。