蝶が見る夢



『思春期特有の痛々しい若さだと思いませんか?』

『いや、別に。寧ろ、羨ましい…かもな』


先輩は私をぎゅうっと抱きしめた。
男の癖にすべすべの肌が、とても冷たい。















匠は絶望していた。
笑っていながら、匠の中は絶望で溢れていた。
大学時代に何の気なしに手を出した出張ホストの仕事に追われて、大学を中退してから自分はおかしくなったと彼は言う。
出張ホストの仕事を辞めたい、辞めたいが辞めた後にどうやって生きていけばいいか分からない、だから辞めることができない。
ホストを辞めた後に、誰が自分を必要としてくれるのかと苛まれている。
そんなことを考えているから疲れるのだと言ったことがあるが、全く耳を貸さない。
なので、それからもう私は何も言わなくなった。何も言わず、匠の側に在るだけ。
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