胸の音‐大好きな人へ‐
胸の音
10月にもなると、街路樹から舞い落ちた枯れ葉がコンクリートの地面をカサカサ鳴らすようになる。
通学中の冷たすぎる秋風は、寝起きのこの体をたたき起こすかのように強く空(くう)を切る。
《おはよう。これから学校行く。
バイト行くとき、気をつけてな》
いたって普通な大学生。俺の日常。
3日に1回だけ、春佳(はるか)のメールへ返信している。
その瞬間だけは何よりも幸福を感じた。
起きた瞬間に浮かぶのは春佳の顔。
ゆうべ、寝る直前まで電話してたからかな?
愛しいけど、毎日好き好き言いたいけど、ワケあってメールは毎日しないことにしてる。
あっちからは毎日、業務連絡かのように1時間刻みで来るけど。
春佳のメールで始まり、春佳の声を聞いて終わる毎日。
こんな日が、もう半年続いてる。
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