胸の音‐大好きな人へ‐

「……うん! 用意するねっ」


――気のせい?

快晴の空の下にたゆたう湖のように澄んだ春佳の瞳が、曇り空のごとく暗くなった気がした。

……が、それも杞憂(きゆう)に終わる。

食事を終えて、シャワーを浴びると、一ヶ月ぶりに春佳と唇を重ね、肌を合わせた。

春佳のぬくもりが、会えない間に募った寂しさを埋めて心を安らかにしてくれる。

春佳も同じ気持ちでいてくれたらいい――。

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