胸の音‐大好きな人へ‐
ケータイは必需品。
なくては気が気じゃなくなる。
春佳とのつながりはこれしかないから。
――遠距離恋愛――。
今年の春から、俺達は長い距離を挟んで付き合っている。
高校では毎日のように顔を合わせることができていた春佳と離れ離れになってはじめて、「ケータイは現代人になくてはならない物」ってメディアで言われてる理由が、身にしみた。
昔の人は、よくケータイ無しで生活できたよな。
話したいときにすぐ伝えられないと、焦るじゃん。
公衆電話か家電、あるいは手紙のやり取りで関係を維持できるなんて考えられない。
バカにしてるんじゃなくて、普通に尊敬する。
それだけ俺は、春佳との関係を維持するのにケータイ頼りになっていた。
それがいいことか悪いことかも、深く考えないままに……。