胸の音‐大好きな人へ‐
なんてな。かっこつけたがりな俺の悪いクセ……。
すぐ自分を美化してしまう。
もうすぐやってくる大学生活に浮かれてるフリしながら、本当は春佳と離れることが寂しくて仕方なかったくせに。
入学祝いにもらった金の使い道。
普通なら自分のことに使うべきなんだろうし、オヤジもそのつもりで分厚い封筒を俺にたくしたんだろう。
だけど、ごめんなオヤジ。
その金さ、アパートへ引っ越した時にはすでにアクセサリーに化けてたわ。
生まれてから今まで慣れ親しんで来た愛知を離れ、京都の大学に行くため旅立った前日。
春佳にダイヤ入りのネックレスを送った。
引っ越しの準備とかで店に足を運ぶ時間がなくて仕方なく通販で買ったから、本物かどうか分からないけど、キッチリ20万もした代物。
小指の先くらいもない小さな黒いパーツに、まばらにはめこめられた細かいダイヤの白い光は、春佳が笑った時のようにキラキラしてた。