愛花～桜～
困惑した表情を見せるイヴにルートは目を細めて薄く笑みを浮かべた。

「さぁ、王の考えは計り知れませんがイヴ様が王に何かしたのではありませんか？」

ルートからの思いもしていなかった言葉に動揺したように肩を揺らした。
王には一度も会っていないのに何故その様なことを言ってくるのか本当に分からなかったのだ。

「例えば、最近王がどの宮にもいらっしゃらない原因が貴方とか」

黙り込むイヴにルートはそう畳み掛ける。
ルートが言わんとすることが分かったイヴは屈辱で頬を赤くした。
幾ら位が低いからと言ってまるで自分が色仕掛けで王に取り入っていると言っているようなものだった。
ドレスのスカートを握り締めて屈辱に耐えるイヴにルートは気分を良くしたように紅い口紅で彩られた唇を歪めた。

「とにかく、これは決まったことですのでせいぜい、後宮の恥にならぬようお願いしますね。」

「……はい」

反論する気にもならず小さく返事をすると立ち上がる。
ソフィアが何か言いたそうにしていたが目で黙らせるとそのまま聖蘭ノ宮を後にした。
身に覚えの無いことによる侮辱からイヴは屈辱や上級貴族であるルートへの劣等感から気分が高まり怒りを抑えるのに精一杯で未だ見ることのない王への関心はなかった。
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