愛花~桜~
イヴが帰った後、ルートは苛立ちを隠せないように椅子に深く腰を掛けた。
イヴに嫌みを言っただけではこのような屈辱には耐えられなかった。
王の隣で隣国の姫君を迎え入れるのは自分であると思っていたし、父からもその様なことを言っていた。
なのに直前になり王が考えを変えたのだ。
周りの反対を気にせずに。

「忌々しい田舎娘が……」

王に何をして取り入ったのかは分からなかったがイヴに少なからず王が惹かれ始めているのは良く分かっていた。
その証拠に各宮に忍ばせている侍女からの報告ではここ最近王が桜ノ宮に出入りしていることが分かったのだ。
これ程までの屈辱は生まれて初めてで何故あのように位の低い娘に、あのようなみすぼらしい小娘にこのような屈辱を受けなくてはならないのか。

「地位も財力も持たぬ小娘にこの私(ワタクシ)が負けるなど有り得ない」

自分があの小娘に負けるなど、あってはならないのだ。
正妃の座も王からの寵愛も誰にも譲るつもりはない。
この国の女の頂点に立つのは私しかいないのだ。
そうルートは強い憎しみと嫉妬を抱きながら思った。
イヴなんかには負けたりしないと、冷静さを欠けた思いが今後どの様な結果を生むか等分からずにただただ憎しみと嫉妬心を募らせていった。
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