しゃぼん玉
「ミズキ、どうしたの?」
夕食時、ミズキの様子を心配したミズキの母親·星崎菜月(ほしざき·なつき)が声をかけた。
父親の星崎大成(ほしざき·たいせい)は、単身赴任中であるため、夕食はだいたい菜月とミズキの二人きりで取ることが多い。
ミズキは無理矢理笑顔を作り、
「ああ、今日はサークルではしゃぎすぎちゃって、疲れてるみたい」
と、嘘をつく。
菜月はホッとした表情になり、
「ならいいけど。
大学は、だいぶ慣れたの?」
「うん。楽しいよ。
勉強も、遊びも」
「そう。よかった。
また、ナナセ君やマナちゃんのこともウチに連れてきなさいね」
「うん」
夕食もそこそこに、ミズキはダイニングを後にした。
菜月は、最近とても明るくなったミズキにすごく安心していた。
四年前、星崎家の長男であるリョウが自殺して以来、星崎家には闇が広がり、以来、それは晴れることがなかった。
ミズキもずっと、リョウの死を引きずっていた。
だが、高校三年生になってから高山マナ(たかやま·まな)という女友達が出来て以来、徐々に明るくなっていったのだ。
菜月は、ミズキのそんな変化を嬉しく思っている。