しゃぼん玉
ミズキに対して性的な魅力も感じるし、ナナセにも性欲はあった。
けれど、一度抱きしめてしまったら、それ以降、ただの男と女の関係になってしまいそうで……。
ナナセにはそれが未知のことで、とても怖かった。
ミズキのことを好きな分、知らない世界に対し妄想ばかりが先走る。
シュンはそんなナナセの考えを読み取ったように、
「なにも、いきなり進展しろなんて話じゃない。
抱きしめるだけで安心することってあるしさ」
ナナセは、ミズキに抱きしめられた時のことを思い出した。
その時、とてもあたたかくて、ミズキの心がナナセのそれを包みこんでくれるような、そんな感じがした。
ミズキの心を、抱きしめてあげたい……。
そう思う気持ちは、いやらしいものでも何でもない。
それがナナセ自身の愛情表現の仕方なのだと、今ようやく、気づくことができた。