しゃぼん玉
動画の音声を聞くため、アイリはマサヤの部屋を出て下の階に移動した。
今、マサヤに起きてもらっては困る……。
マサヤが一番来なさそうなマサヤの両親の部屋に忍び込み、動画を再生した。
“マサ……ヤ?”
全裸にされた動画の中の少年が、複数人の男女に暴言を吐かれながら、蹴られたり石を投げられたりしている。
彼らが放つ言葉の暴力の中にはマサヤの声が流れており、アイリの耳には、ハッキリとそれが聞こえた。
「お前なんかが、メイに釣り合うとでも思ってんのかよ。
あんなふざけた手紙書きやがって。
イイヤツぶりやがって。
お前みたいなやつ見てると、マジムカつくわー。
まっ、安心しろよ。
この動画、メイにも見せてやるからさ」
“メイって、あのメイ……!?”
アイリがマサヤの浮気を疑うキッカケとなった女の名前。
マサヤは、アイリを呼ぶ時、確かに「メイ」と呼び間違えた……。
いつも聞いている大好きな人の声がナイフのようにその少年を傷つけていることが、無関係のアイリにも伝わった。
映像の中の少年は、見ているこちらが苦しみでむせそうなほどの泣き顔をしている。